傷だらけ父さんのHappy Life Journey -マルファン症候群と共に生きる-

難病(マルファン症候群)をもち、これまで多くの手術を経験。そんな傷だらけ父さんの闘病記とハッピーな人生を追い求め挑戦する姿を紹介します。同じような境遇にある人、支える人達の不安を和らげ、諦めない気持ちへのエールになれば幸いです

術後リンパ漏(リンパ嚢胞)

大動脈手術の後遺症

これまで2003年、2017年、そして2020年と大動脈解離に伴う大動脈手術を計3回受けてきた。幸運なことに1回目、2回目の手術後には傷口の痛みなどはあるものの大きな後遺症はなかった。だが、3回目は一番大きな手術であったことから、大動脈周りの細やかな血管や神経、リンパ管を広範囲に切らざるを得なかったこともあったのだろう、リンパ関係に後遺症が出た。

手術後のICUと入院の記録(→コチラ)で触れたように、手術後しばらく腹部に刺さっているチューブ(ドレーン)からの排出液が多く「中程度のリンパ漏」と診断されていた。入院中にリンパ管を粘度の高い造影剤で埋める治療を受けた後、ドレーンからの排液量が少なくなったことを確認し、退院できていた。退院後は「リンパ管はもう大丈夫だろう」そう信じて仕事復帰するまで回復してきていた。

手術後3か月検診で見つかった黒い影

2020年7月、退院後3か月のタイミングでCT検査を受けた。今回人工血管に置換した大動脈それ自体は問題ない状態が確認できた。また人工血管から血液を送っている腎臓などの臓器も問題なさそうであった。しかし、だれが見ても怪しい大きな黒い影(卵型の袋みたいなもの)がCT画像に写っていた(下記写真の赤円)。ドクターからは「CT画像だけでは断定できませんが、恐らくリンパ液か、人工血管を覆っている組織から染み出ている組織液か。染み出た液が溜まることは良くあるけど、普通は体に吸収されるので、ここまで大きいのは稀。もしこの袋の中に大動脈から漏れている血液が溜まっている場合は、同じ大動脈の手術をもう一度して人工血管を取り換えないといけなくなります。」と伝えられた。

「もう1回同じ(胸腹部の大動脈)手術!?それだけはあってほしくない。」そう強く思った。

正面から見たリンパ嚢胞(赤円部分)

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輪切りにした画像で確認するリンパ嚢胞(赤円部分)

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検査入院、治療と再入院

それから3日後、先ずは治療方針を決める為に検査入院した。検査入院初日にCTを撮り、大動脈手術を執刀してくれた外科チームのドクターから治療方針を聞いた。「まずは溜まっている液を吸い出して中身を確認します。その内容物がリンパ液であれば、リンパ管造影でリンパ管の漏れがないか確認します。入院期間は2週間くらいですかね」とのこと。想定していたより入院期間が長い。

「この溜まっている中身は血液でありませんように。大動脈の再手術だけは絶対なりませんように。」そう祈り、治療前日の晩を過ごした。

腹腔穿刺(ふくくうせんし)とドレナージ

術後リンパ漏(別の診断名:リンパ嚢胞)の治療として、溜まっている液を抜く為に腹腔穿刺とドレナージという方法がとられた。腹部に針を刺して腹腔内に貯留した液体を採取することを腹腔穿刺といい、チューブを挿入して液体を排液することをドレナージというみたいだ。

治療当日の昼過ぎ、手術室に歩いて行き、自ら手術台に横たわる(ああ、この病院で何回目の手術室だろう...3回目?4回目?すっかり手術台にのるまでの手順に慣れてしまった)

先ずはドレンの針を刺すために、お腹の左を消毒して麻酔を打つ(今回の治療は局所麻酔)。治療を通してこの時が一番痛かった。腹部の上を半ドーナッツ状の超音波装置で確認しながら慎重にドレンチューブが挿入されていく。麻酔のお陰で、お腹の感覚や痛みはない。チューブは挿入されていき「OK」といった位置で中身の吸引が始まった。内容物には血液の交じりはなく、黄色がかった透明なリンパ液のようだ。血液ではないとの事でまずは一安心。吸引を再開し、トータル290ccの液を吸い切った所で治療は完了した。

リンパ管造影

続いてリンパ管造影に進んだ。これは麻酔を使うことはなく、足の付け根(鼠経部)の太いリンパ管に針を刺し、粘度の高い造影剤を入れていく治療だ。チクチクと軽い痛みがあるので緊張こそするが、痛みそのものは大したことはない。最初は右脚の付け根に針を刺して、造影剤を入れながらリンパの漏れを確認していく。次に左脚の付け根から同じように造影剤を入れていく。超音波装置のモニターを確認するドクターのやり取りを聞く限りリンパ管からの漏れはないようだ。一通り終わったようで「OKです。漏れはありませんよ。小さな穴は造影剤で埋まっていきますから様子を見ましょう」とのこと。治療は終わり、腹部にドレンチューブを付けたまま病室に戻った。

入院と療養

治療を終えた晩からごはんが出た。ちなみにリンパ液は脂質があると出やすいとの事で、低脂肪分のメニューだった。治療初日はドレンチューブからは何も液は出てきていなかった。翌日も、前日の治療で290㏄を抜いたことでリンパ液の溜まり(嚢胞)はしぼんで癒着したのか、それともリンパ造影で治ったのか、理由は分からないがドレンチューブから全く液は出て来なくなっていた。「これは順調そう。早く退院できそうだな。」そう安心しきっていたが、そんなに上手くはいかないと翌日思い知る。

入院5日目、昼食後にドレンチューブを見ると覆っているガーゼがリンパ液で黄色く染まっていた。何やら食後にリンパ液が結構出てくる。「治ってないのか。。。このままリンパ漏と一生付き合うことになるのかなぁ。」そう考えたらなんだかナーバスになってきた。

翌朝、ドレンは吸引力のある陰圧バッグのタイプに切り替えられた。するとガーゼに染み出すことはなく、バッグにリンパ液がちょろちょろと吸い出され、昼食後にはもう何も出てこなくなった。その日の午後にCTを撮り、検査の結果、リンパ嚢胞は消えている事が確認された。翌日にはドレンチューブを抜き、翌々日の入院8日目に退院することができた。

2週間かかると思っていたけれど、早く退院できてよかった。というのも、退院できた日の2日後は息子の誕生日だったので可能であれば、その日に間に合うように退院したかった。早く退院できたおかげで、自宅で一緒に誕生日を祝うことが出来た。

退院1か月後の検診

8月末、退院から1か月後にCT検査を受けた。その結果、入院時に確認されていたリンパ嚢胞(上写真の赤円)はキレイサッパリなくなり、再発もしていなかった。この結果をCT画像で確認し、ドクターから「もう大丈夫。心配ないですよ」との言葉を聞けた時は本当に嬉しかった。

「これで3年前に発症した大動脈解離との闘病はひとまず落ち着いたのかな。」そう信じてホットした。

一緒に祝えた誕生日ではしゃぐ息子

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