傷だらけ父さんのHappy Life Journey -マルファン症候群と共に生きる-

難病(マルファン症候群)をもち、これまで多くの手術を経験。そんな傷だらけ父さんの闘病記とハッピーな人生を追い求め挑戦する姿を紹介します。同じような境遇にある人、支える人達の不安を和らげ、諦めない気持ちへのエールになれば幸いです

良き患者であるススメ ②採血のベストスポットを伝える(看護師さんとWin-Winになる)

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大動脈解離を経験して、そして大動脈弁を含む大動脈基部を人工弁と人工血管に替える手術を受けてから、頻度が増えたことがある。採血だ。採血であったり点滴をするときは静脈に針をチクリとするのだが、頻度が増えた分、痛かったり、辛い思いをした経験も増えた。

今まで何回、採血や点滴のために、この ”静脈へ針をチクリ“ を経験してきたのか、ちょっと計算してみた。

もし健常者であれば、採血の機会といえば、せいぜい健康診断の時で、年に一回。体調を崩して点滴をする機会があったとしても、 ”静脈への針をチクリ“ の機会は平均して年1、2回といったところだろうか。一方、19歳から36歳までの間に2回の大動脈解離と3回の大動脈手術を経験した私は後に示す記録と計算によると、採血のやり直しを含まずに少なく見積もっても17年間の間にざっと164回の”静脈へ針をチクリ“ を受けてきたことになる。

大雑把な計算だがこの17年間、健常者と比べておよそ10倍の経験をしたと考えると驚きだ。その分、看護師さんや検査技師さんにお世話になった。

 なお手術においては動脈に針を刺し、点滴や採血バイタルサイン(血圧など)の測定が出来る “Aライン” と呼ばれるルートを確保する。手術からICUを出るくらいまでは、このAライン経由で採血と点滴を行うので、“針でチクリ” の回数にAライン経由の採血、点滴は含まない。ちなみに、Aラインのルートを確保する際にも、”針をチクリ“ とするのだが、それは緊急搬送されてときか、手術麻酔後に行われるので、普通は経験することは中々ない。私は、過去に手術中以外の意識のある時に数回経験したが、手首の若干深めのところに針を刺すので痛かったことを覚えている。

話しを戻して、17年間で累計164回の ”静脈へ針をチクリ“。さすがにそれだけ経験していると色々な苦痛や怖い思いもしてきた。これから大動脈の手術や血液関係の服薬がある方は、何かと採血、点滴の機会が増えると思う。そんな方々に私の経験より一つおススメをしたい。それは、「自身の採血/点滴のベストスポット(針を刺しやすい血管)を把握しておき、針を刺すときに看護師さんや針を刺す人に伝えること」だ。

私は、よく血管が見つかりづらいと言われる。特に十分な水分が取れていない時や、空腹時(健康診断や造影CTの前はよくその状況になる)、また、降圧剤を服薬しているときに自分でも分かるくらいに腕から針が刺せそうな血管が見えなくなる。そして、そのような時は採血する側も同じで、なかなか良い血管を探せず、採血は1回では上手くいかず、他の血管を探してやり直しとなる。

また、一概には言えないが大病院だと時期によっては、入院期間中にまだ採血の経験が少ない新人看護師さんや研修医が採血の担当にあたることがある(まあ、私の体でよければ好きなだけ経験を積むのに活用していただければ良いのだが)。

私はある病院で入院中に、1回の採血のために計10回(!) 針を刺し直されたことがある。最後の10箇所目はそけい部(股にある太い血管)から採血した。採血は失敗すると痛い。血管を探っている間も痛いし、血管を貫いてしまうと、しばらく痛みが続くし、青あざのように周りが変色する。

また、造影CTをするとき造影剤の点滴をするのだが、この時も怖い思いをしたことがある。造影CTでは造影剤が勢いよく体に入るため、十分に太さのある血管に点滴もしっかりしておかないと血管が破れるリスクがあると聞いたことがある。その話を聞いたあとも、中々うまく血管を見つけることができなかった。休憩を挟みながら左右合わせて4回目でやっと造影剤用の点滴の針が刺さり、準備ができたときの事だった。自分一人だけ取り残されるCT撮影が始まり、機械が動き出し造影剤が入り出した瞬間、点滴の針を刺している箇所に激痛が走った。直ぐ「痛ーい!」と大声で助けを呼んで検査は中止になったが、上記のことを事前に聞いていたので、本当に怖い思いをした。いまだに造影CTの時は緊張する。

そんな思いをせず、痛い回数を減らす一つの方法が、普段の採血の時によく採血を観察して、自分の採血のベストスポット(採血しやすい、点滴針を刺しやすい血管)を左右の腕で2箇所程度覚えておくことだ。そして、点滴針を刺したり、採血をする際に「ここが一番良い場所です。」と伝えることだ。

私の場合、ベストスポットは写真の箇所だ。第2候補は写真では見えない右腕の外側にあり、左腕も同様の場所に良い血管がある。ただ、それらの箇所以外はなかなか見つからない。点滴や採血をするとき上手な人は、本当に見事に針を刺すに適切な血管を見つけ、グリグリと血管を探すことなく、スッと針を刺す。軌跡かと思うくらい全く痛みを感じないことを一度経験している。

看護師さんにとっても血管が見つけづらいのは大変なようだ。ゴム紐で腕を縛り、アルコール綿で血管を浮き立たせて一生懸命に血管を探る。だけど上手くいかない事もある。失敗するたびに、患者さんの痛みを理解して「すみません」と謝ってくれるし、緊張の面持ちが目に見える。そんな時、針を刺すベストスポットを左右合わせて2、3箇所伝えるだけで、ずっと採血/点滴はスムーズにいく。患者さんにとっても痛いことが少なくて済むし、看護師さんにとっても精神的にも時間的にも負担が減る。

数多くの経験から、”自身の採血/点滴のベストスポット(針を刺しやすい血管)を把握して、針を刺すときに看護師さんや針を刺す人に伝えること“。これは本当におすすめだ。ぜひ参考にして欲しい。

ちなみに写真で示す私の採血ベストスポットは、計算した164回の ”針のチクリ” の8割近くを受けて立ってきている。それぐらい強い血管だ。何回も刺されては修復を繰り返してきたこの血管に感謝したい。「ありがとう、右腕の血管さん。そしてこれからも宜しくお願いします。」

 

17年間の静脈への針のチクリ(採血、点滴)の記録

 

大動脈解離A型(大動脈基部置換)の手術から入院時

 : 手術からICU滞在期間は5回少なくとも針を刺したことを覚えている。3週間の一般病棟入院期間は薬(ワーファリン)の調整もあり、採血を平均すれば3日に1回していた。退院前には造影CTの点滴が1回あり、の累計13回 ”針でチクリ“ を受けていることになる。

 

大動脈解離A型(大動脈基部置換)の退院からからB型発症までの14年間

 :薬の調整と確認も含めた2ヶ月に一回の通院で計84回。健常者と同じ健康診断で14回。

 

大動脈解離B型発症から解離性大動脈瘤の保存治療の3ヶ月間

 :緊急搬送から1カ月の入院期間で、採血をざっくり平均3日に一回の10回。退院後の通院と造影CTで3回。

 

大動脈解離B型(胸部大動脈置換)の手術から入院時

 : 手術からICU滞在期間はAラインや手術時に刺した点滴ライン(ルート)により新たなチクリは無しとしてカウント。2週間の一般病棟入院期間の採血をざっくり平均2日に1回として7回。退院後の造影CTで1回。

 

3回目の大動脈手術(胸腹部大動脈置換)までの3年間

 :2カ月に一回の通院で計18回。健常者と同じ健康診断で3回。

 

大動脈解離B型(胸腹部大動脈置換)の手術から入院時

 : 手術前日からICU滞在期間は手術中に付けられたルートからの採血、点滴のため、点滴針の入れ直しで2回だけ静脈へ針をチクリ。2週間の一般病棟入院期間の採血をざっくり平均2日に1回として7回。入院前と退院後の造影CTで2回。

 

*これから手術や入院、通院があり得る方へ、経験談を交えていまの段階からできることのおススメを紹介する「良き患者のススメ」 を下記カテゴリーにまとめています。 ”これから”の参考にして頂けると有難いです。 

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